導入事例
有限会社ツムラ本店

150年続く伝統と、世界が認めた品質。
創業1870年(明治3年)。大阪府松原市で150年以上にわたり最高級の合鴨「河内鴨」を育み続ける、有限会社ツムラ本店。かつて合鴨の一大産地であった大阪で、孵化から飼育、精肉、販売までを一貫して手掛ける唯一の生産者です。
5代目当主・津村佳彦氏は、抗生物質や成長ホルモン剤を一切使用しない独自の飼育法を貫き、刺身でも食せるほどの鮮度と安全性を誇る「河内鴨」を一日200羽限定で世に送り出しています。その卓越した品質は国内外で高く評価され、2019年のG20大阪サミットでは各国の首脳をもてなす公式食材として採用される栄誉に輝きました。
しかし、この揺るぎない信頼と伝統を守るためには、いかなる困難にも立ち向かう覚悟と未来を見据えた備えが不可欠でした。
100万円の損害。ブランドの存続を脅かした、ある日のトラブル。
高品質の「河内鴨」を生み出す工程は、デリケートな卵をヒナへと孵化させる最も神経を使う作業から始まります。ツムラ本店では毎週この重要な作業を行っていますが、ある日、予期せぬトラブルが発生しました。
「孵卵器のブレーカが落ちたのです。わずか3時間の停止で、100万円を超える直接的な損害が発生しました。しかし、問題はそれだけではありません。卵が全滅すれば次のヒナが育たない。それは、当社の生命線である一貫生産体制のサイクルが断ち切られ、大切なお客様への供給が滞ることを意味します。ブランドの信頼そのものが揺らぐ、まさに存続の危機でした」と津村社長は語ります。
忍び寄る火災の脅威
さらに津村社長は、畜舎特有の慢性的リスクにも目を向けました。それは、埃や高湿度が引き起こす「トラッキング現象」による火災です。コンセントとプラグの隙間に蓄積した埃が湿気を吸うと微弱な電流が流れ始め、やがて火花放電が発生。これが繰り返されることで最終的に発火に至るのです。畜舎という環境は、まさにこのトラッキング現象の温床でした。事業の土台そのものが、常に目に見えない脅威に晒されていたのです。
この二つの危機的状況に対し、日東工業は包括的なリスク対策を提案しました。

プロセスを守る「Asig(エーシグ)モバイル」
まず、急な生産停止リスクに対応するため接点監視ユニット「Asig(エーシグ)モバイル」を導入。
本製品は単3形乾電池で駆動し、携帯電話のLTE-M回線網を利用して異常信号をクラウド経由で送信するため、大掛かりな配線工事は一切不要です。孵卵器のブレーカーに設置するだけで、万一ブレーカが落ちても、遮断信号を検知し即座に津村社長へメールでお知らせ。これにより、どこにいても24時間365日、生産プロセスの心臓部を遠隔から見守ることが可能になりました。
場所を守る「スパーテクト」
次に、慢性的な火災リスクに対応するため放電検出ユニット「スパーテクト」を設置。これは、火災の前兆である「火花放電(スパーク)」そのものを検知する先進技術です。配電盤に取り付けられたユニットが電気回路に発生する特有のノイズを常時監視。トラッキング現象などによる危険な火花放電を初期段階で捉え、本格的な火災に至る前に警報を発します。
津村社長が求めたのは、単なるコスト削減策ではありません。それは、150年の歴史と顧客の信頼を守り抜くための「事業継続への戦略的投資」でした。この二つのソリューションは、万一の事態に備える消極的な「保険」ではなく、ブランドの未来を確かなものにするための、攻めの経営判断だったのです。
未来へつなぐ「精神的な安心感」という最大の価値。
「夜中であろうと早朝であろうと、何か異常があればすぐに知らせてくれる。この安心感は計り知れません。いつ何があっても大丈夫だという精神的な余裕は、日々の仕事に集中しより良い鴨を育てる上で不可欠です」と津村社長は微笑みます。
この先進的な取り組みは、他の畜産農家にとっても重要な模範となるでしょう。「誰もやらないなら、私がやる」という信念で、常に業界の課題解決の先頭に立ってきた津村社長。その決断は、自社の未来を守るだけでなく、業界全体の安全基準を新たなレベルへと引き上げる一歩となりました。
「Asig(エーシグ)モバイル」と「スパーテクト」。それは、津村社長が守り続ける150年の伝統、そして「この『河内鴨』という文化を息子や孫の代までつないでいく」という未来への誓いを支える、信頼すべきパートナーなのです。
・LTE-Mは、3GPP(Third Generation Partnership Project)によって標準化された通信規格です。
日東工業では、皆様の事業が抱える様々な課題に寄り添い、最適なソリューションをご提案しています。
事例詳細
- 設置機器
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放電検出ユニット(スパーテクト)╳1台
接点監視ユニット(エーシグモバイル)╳1台 - 設置場所
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有限会社ツムラ本店

